アリヤラトネ博士講演 「社会に求められている”真のリーダーシップ”とは」(2)

アリヤラトネ博士

 スリランカNGO 「サルボダヤ」 創設者・会長である A.T.アリヤラトネ博士
をお招きし、2010年10月9日(土) 大阪市のパークホテル臨海にて
  第21回アジア国際ネットワークセミナー特別講演会
  「今、社会に求められている”真のリーダーシップ”とは」

を開催しました。

 この講演の内容を 前回にひきつづき、ご紹介します。

 サルボダヤは、スリランカで草の根の人々の福祉の向上のために、
シュラマダナ運動(分かち合い運動)を過去50年にわたり実施しているNGO団体
です。
 現在、スリランカの15,000の村(総人口の2割)で活動を展開しており、
その活動はスリランカにとどまらず、全世界に広がり続けています。

 この講演内容は、JAFSの会員誌「アジアネット第106号」に掲載されたものです。

「今、社会に求められている”真のリーダーシップ”とは」
A. T. アリヤラトネ博士
第21回アジア国際ネットワークセミナー特別講演会
(前記事からのつづき[一部再掲]です)

地域社会に求められるリーダー

 これまで、私は世界レベルのリーダーや国家レベルのリーダーについ
て話してきました。しかしながら、このアジアには、きわめて高度に発
達した世界的都市が一部に見られるものの、今日のアジアの殆どが、未
だ農村を基盤としています。こうした農村部は、多くの場合、狭い割合
を占める都市部に大きく影響されます。ということは、農村部にあって
も、この急速に変化している経済的状況や、その原因をきちんと理解し
ておかなくてはなりません。将来のビジョンが必要であり、そのビジョ
ンを指し示す人、すなわちリーダーが必要なのです。

 アジア諸国において、将来の地域社会の姿についてのビジョンなしに
は、農村や都市のコミュニティリーダーについて考えることはできませ
ん。アジア諸国の一部の地域では、現代化と工業化が起こっています
が、農村部がいずれ開発されて都心部のようになっていくという考え、
それは間違っています。アジアの良き未来は、これまでとは違った開発
戦略において、社会組織が中心的役割をどれだけ果たせるかにかかって
いると思います。

 今日、中央集権的な政治や経済、官僚組織、多国籍企業が開発におけ
る中心的役割を担っています。現実、貧困、飢餓、栄養失調、疾病、社会
的に恵まれない環境にいる人は、かつてないほどに倍増しています。

 そのような中、私たちのように社会開発を行なう団体、組織だけが、
アジアやアフリカにおいて貧困に苦しむ何百万の人々を助けていこうと
しているのです。

 私は国家レベルでの共栄圏を、ネットワークでつなぐことができる
自治村落、または地域独立共同体といった考えを提案します。

 マハトマ・ガンジーは、(植民地からの)独立後のインドという国が、
村落共和国の集合体としての共栄圏であるべきだと主張しました。この
考え方に私は一目をおきます。なぜなら、政治的、社会的、経済的、環
境的、文化的または道徳的にあるどんな問題に関しても、中央集権化さ
れた国家では解決できていないからです。

 これは、頭の中で考えているだけではなく、私がこれまでにスリラン
カにおいて実践してきたことです。スリランカのサルボダヤ・シュラマ
ダナ運動は1万5千の村の内、特にサルボダヤの活動が活発な3千ヶ村
において、自治システムを取り入れた村づくりを試み、かなり良い結果
が見られました。

 いつの日か我が国の政治家が、私たちが過去50年かかって行ってきた
努力をまじめに取り上げてくれることを願っています。

 真のリーダーは国家的な、またグローバルな問題をよく理解しつつ、
自らがリーダーシップを発揮する農村や都市地域社会の中で、非常に明
確なビジョンを持たなければなりません。地域社会の歴史、生態的及び
地理的事実、人口統計や経済的データ、地域の社会学的背景、地域の自
然的・人的資源、地域の有する科学的・専門的技能、人々が直面してい
る問題や教育レベル等に関する、しっかりとした知識を持たねばなり
ません。

 地域社会(コミュニティ)の開発が中心的課題となるならば、リー
ダーは、地域社会全体が自立開発に参加するように、促していくことが
大事です。そのためにリーダーは、社会の構成員の一人一人の思いや心
に、自尊心や誇りをしっかりと植えつけ、彼らの自立、自己犠牲、お互
いにもっている生活資源を分かち合う、そうしたことが社会への共通の
資産となりうることを、しっかりと教え込まなければなりません。

地域社会の問題解決へのアプローチ

 「問題の答えは、問題の中にこそある」、これは偉大な哲学者、クリシュ
ナ・ムルティの言葉の引用です。地域社会にある問題を理解し、それを
解決するのは、その地域社会自身なのです。

 第1段階としては、心理的なインフラ作りが必要となってきます。地
域社会がビジョンを共有して、達成していくために貢献するのです。

 第2段階は、社会的なインフラ作り。地域を開発していくためには、
妊婦、幼児、就学前児童、就学児童、若者、女性、農夫、職工、その他の
労働者、老人や年長者をグループ毎に組織化することです。そして、彼
等に必要なのは、参加することで自分の存在感を感じさせることです。

 
 どの社会にも共通して、以下の基本的な社会問題を抱えています。環
境、水の供給、衣服、衛生、住居、医療、通信、資源、教育、文化、精
神的な目覚め等。これらはいわゆる基本的生存条件です。

 地域社会は、これらの人間の基本的な社会問題を解決していくため
に、それらのグループを作り、問題解決に参加させていくということで
す。必要ならば、行政からの助けも得て、組織化され、行動しなければ
なりません。そして、その主導権は、地域社会が持たねばならないと考え
ます。これら地域社会が能力を発揮し、力をつけてより良い形に向けて
構築していくことを、コミュニティ・キャパシティ・ビルディングと、私
たちは呼んでいます。地域社会の発展に関するこの段階は、基本的必要
充足段階といわれるものです。

 JAFSは、それらの地域社会の問題解決に対し、長年に渡って地域
社会自身をサポートし続けてきてくださいました。そのことに感謝申し
上げます。

変革へのビジョン

 私たちが変革をもたらすことは可能です。
 アジアの地域社会において、再編成を行なっていくための最後の手段
は、村落や地域社会が参加型としての民主主義を推し進めていくことに
あります。投票する権利を持つ一般市民が、村の議会や上級の議会の代
表を罷免する力を持てるような民主的な参加システムを発展させるべき
なのです。

 過去50年にわたり、いかなる政治的権力や富、名声を期待することな
く、人々に仕えてきた私の経験から、古代の知恵と現代の科学技術を駆使
して、人類及び全ての生きものが未来においても、健全な環境の中で
素晴らしい文明を作り上げて共存していくことができると、確信を持っています。

 
 そのためには、現在起きている様々な状況、すなわち民意が反映さ
れないこと、中央集権的、非効率的、経費高、無駄、複雑、非道徳的な上
意下達の政治的経済的構造から、より人間らしく、透明性のある、素
朴で、地域主体性のあり、道徳に基づいた、地域社会への人々の参加が
可能な構造へと平和的に転換していく能力が必要です。

 もし、私たちの意識が、国及び国際的レベルにおいて横のつながり、
ネットワークを可能にし、地域社会が自治できるような体制が必要だと
気づくならば、変革は可能であると確信します。

 指導者、リーダーは先見性に富んだ人でなければならない、と申しま
した。これはなかなか大変なことであります。真のリーダーは、理想的
な答えに至るまで、様々な決意との戦いをあきらめません。そして、人
間性、謙遜、仲間愛、共感、誠意、年長者への敬意、真の友情の実感、
仕事への熱意を持ちながら、共有したビジョンを実践に移していくの
です。

 もし、私たちが世界のあり方についてのビジョンを、実際の生活に近
づけていくことができれば、この理想は本物となります。
 今日、若き指導者の皆さんに、それを課題として残したいと思いま
す。

(本文は、JAFS会員誌「アジアネット第106号」より転載)
(記事で使用した写真は、サルボダヤの活動に関するものです)

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