新型コロナウイルス感染症は、最初の大流行から今春で2年が過ぎましたが、新たな変異株であるオミクロン株による第6波の流行が全世界に広がり、まだまだ収束のきざしが見えません。JAFSが支援活動をしているアジア各国でも、大勢の人が感染し、命と暮らしを脅かされています。
とりわけ深刻なのが、未来を担う子どもたちが、長引く休校などによって、かけがえない教育の機会を奪われつつあることです。貧富の格差も、それに追い討ちをかけています。
そんな現状に「黙って待つだけでは何も変わらない。私たちにも、できることがあるはずだ」と学校の教師や、日々生きるだけで精一杯なはずの貧しい親たちが、子どもたちのために立ち上がりました。
一方、生活苦から学校を辞める子が増えて収入を絶たれ、教師の給料が払えず存亡の危機に立たされている学校からは、支援を求める訴えを伝えて来ました。
本記事では、JAFSの広報誌「アジアネット」149号により転載し、アジアの学びの最前線から届いたレポートを紹介します。
休校を逆手に出張授業 日印友好学園 パダトラ小学校
インド(2月3日)RUDYA代表 カシナート・デオカデ
立ちはだかる貧富の差
マハラシュトラ州ガッチロリ県チャモシー地区にある日印友好学園パダトラ小学校は、同県で暮らす少数民族の子どもたちに教育を提供するために、2004年に開校しました。同県の少数民族の人々は、教育の重要性について認識していませんでした。子どもたちの生活に大きな変化をもたらすために、この学校はとても重要な役割を果たしています。
2011年に初めての卒業生を輩出して以来、11年が経ちました。これまで親と一緒にジャングルをさまよっていた子どもたちが7年生まで教育を受けられるようになり、7年間の学校生活の中で、学びの大切さを理解することができるようになりました。
学校は2019年までは順調に運営されていましたが、20年3月から新型コロナウイルスの影響により、学校運営に支障が生じるようになりました。インド政府の命令とロックダウンにより、学校は休校を求められました。政府は感染状況を悪化させないよう試みましたが、状況は日に日に悪くなっていきました。政府は子どもたちの教育を継続させるため、オンライン授業を実施するよう求めました。
しかし、オンライン授業が受けられるのは、携帯電話やインターネット環境がある裕福な家庭の子どもたちだけです。パダトラ小学校に通う少数民族出身の子どもたちは、とても貧しく、彼らが住んでいる環境下ではネットや携帯電話などがないため、オンライン授業を受けられませんでした。
中には、家に電気さえない子もいます。夜は勉強するためにオイルランプを使っています。都市部にある私立の学校を除き、政府が運営する学校でさえ、オンラインで授業を開講することはできませんでした。
4人の教師が家庭訪問
私たちは、一度勉強を中断してしまった生徒を再度教育の場に戻すことが難しいことを、よく理解していました。そこで私たちは、学校の先生や保護者会のメンバーと話し合い、「School comes home(スクール・カムズ・ホーム=学校が家にやって来る)」プロジェクトを実施することにしました。
パダトラ小学校には、1年生から7年生までの生徒と、4人の教師がいます。私たちは国のコロナ感染対策基準に従って計画を立て、毎週、生徒の村を訪れ、生徒たちを適切な場所に集め、授業をしました。授業後は、生徒たちに1週間分の宿題を課しました。
このプロジェクトによって、私たちは7年生までのすべての生徒に、休校期間中を含めたシラバスを終えることができました。
実際、プロジェクトの実施前は、生徒は休暇中に家に帰っても、親と一緒にジャングルに行ったり、農作業に行ったりしたため、勉強どころではありませんでした。しかし、今回のこの取り組みによって、生徒たちは勉強を継続し、打ち込むことができました。
最終学年が無事に卒業
政府のガイドラインにより、年次試験を行わずに次の学年へ進級させなければなりませんが、私たちは昨年の成績を考慮し、科目別の点数をつけました。
政府の規則により、今年度の新学期は21年6月21日に始まりました。しかし、5カ月経たずにコロナの第3波がやって来ました。そのため、政府は再度、すべての教育機関を閉鎖するよう求めてきました。
しかし、生徒の親や社会活動家たちは、政府に学校を再開するよう求め、私たちの学校は22年1月24日に再開しました。現在、私たちの学校は通常通り開校していますが、一部の生徒はかぜやせき、熱に苦しんでいます。
このような厳しい状況の中で、先生たちは努力を重ね、最終学年の生徒たちを卒業させることができました。コロナ禍で移動制限があったため、先生たちが毎週、村を訪問することは非常に困難でしたが、政府から移動許可を取り、定期的に村を訪問できるようにしました。
村人は、外部からコロナ・ウイルスを持ち込まれることを非常に恐れています。学校の先生でさえ、村を訪問し、授業を実施することを、なかなか歓迎してもらえませんでした。しかし、十分な感染予防対策を講じて実施していたため、村人は少しずつ「スクール・カムズ・ホーム」プロジェクトを受け入れてくれるようになりました。
先生たちは、オンライン教育も選択肢の一つではあるが、課外活動や人間性の成長につながるような交流はオンライン授業ではできず、オンライン授業だけでは生徒の総合的な成長を妨げる可能性もあると感じていました。また、生徒も先生もオンライン教育のための十分な資材を持っていなかったため、村を週1回訪問するという対応を取りました。これが本校では功を奏したようです。
生徒たちは、最初は親とずっと一緒にいられることを喜んでいましたが、だんだん友達や学校生活が恋しくなっていたようです。
生徒や保護者は、さまざまな場面で不安を表し、学校の再開を切望していました。生徒や保護者は、学校の再開を喜ぶと同時に、教育の場から子どもたちが遠ざかってしまうことは、子どもたちの将来にも大きく影響するということを理解できるようになりました。そのため、勉強を継続し、成し遂げたいと強く思うようになりました。
ご支援のお願い
コロナの影響で苦境にたたされているアジアの子どもたちが、教育の機会を奪われないように支えてください。JAFS関東では、ご紹介したインドのパダトラ小学校に通う子どもたちの就学支援・学校の維持の支援を、アジア里親の会を通じて行っています。
児童一人・一年間の支援には、年間30,000円の経費を必要としますが、毎月2,500円(~3日に一度のコーヒー代金ほど)のサポートがあれば、生徒一人の就学を支えることができます。JAFS関東では、5人の児童の就学支援を目標にしています。
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