クルマ・ガル(もう一つの生理の貧困)

よりよい生理小屋を建てることは、生理中の女性を隔離することへの解決方法として議論の余地がある(NPRの記事から転載)

 NPRのWebサイト に2021年8月に掲載された、生理小屋に関する記事「A Controversial Solution To Menstrual Exile: Building Better Menstrual Huts」を翻訳し、転載します。

 インド西部マハラシュトラ州で、生理中にトライバルの女性や少女が隔離される「生理小屋」を、電気、衛生的な水、ベッド、トイレなどを備えた近代的なものにする試みが、現地NGOにより行われています。
 小屋の改装は、女性たちに安全な場所を提供します。その一方で、この取り組みは、生理小屋の解決策として推進することには、議論の余地がある、と指摘する意見も記事では紹介されています。本来目指すべきは生理小屋の慣習の根絶であるのに、小屋の改修は、それを受け入れる悪い前例を作ってしまうという意見です。
 また、他方では、慣習の根絶には時間がかかり、生理期間中の女性の健康を守ることが今は必要だという意見も述べられています。生理小屋を改修した現地NGOは、新たな生理小屋を、トライバルの女性が生理や健康について学ぶ場としても活用することを目指して計画したといいます。

 記事では、インドにおける生理小屋の問題への対応について、SPARSH代表のディリップ・バルサガレさん(Dr.Dilip Barsagade)のコメントが紹介されています。ディリップ・バルサガレさんには、この5月に開催した”JAFS関東SDGsセミナー「もう一つの生理の貧困 - インド、少数民族の女性たちと生理小屋」”で、メインスピーカーとしてご登壇いただきました。バルサガレさんは、記事の中で、「改良した小屋は生理中の隔離という問題の本質を解決しない。それよりも、人々の考え方や行動を変えることに焦点を当てるべきであり、それは決して不可能な夢ではない」と主張しています。

よりよい生理小屋を建てることは、生理中の女性を隔離することへの解決方法として議論の余地がある

August 29, 2021 9:39 AM ET
ETSUSHMITA PATHAK

生理中の隔離は、チェタナ・マダウィさんが住む村を含む、インド西部のマハラシュトラ州にある村々における慣習である。チェタナさんは、毎月生理になるとこの土で造られた、トイレもなくドアもない小屋で過ごさなければならない。/ 写真提供:チェタナ・マダウィ

チェタナ・マダウィさん(29歳)は、生理になると少しの着替えをもってクルマガル(生理小屋)へ向かう。そこは彼女の家から数ブロック先にある。土でできていて、ドアは壊れ、トイレはない。雨が降ると土の屋根から雨が漏れてくる。

チェタナさんとは違う村に住むプーラワンティ・ガング・コワさん(44歳)は、同じように生理になると小屋に向かう。しかし、まったく違う種類のものだ。扇風機、ベッド、マットレス、水道、医療品、そして屋内トイレがついている。ドアがしっかりついていて、鍵もかけられる。プーラワンティさんは、「とてもくつろげます」という。小屋の外側は、サスティナブルな方法として、プラスチックボトルに砂を詰めた「ボトル・レンガ」をレンガとして使われている。

ムンバイに拠点を置くNGOがマハラシュトラ州に10の最新の生理小屋を建てた。この新しい小屋は、より安全で安心できる環境を提供するために、電気、衛生的な水、ベッド、トイレが用意されている。
写真左:内観、写真右:クシ・キランゲさん17歳、プーラワンティ・ガング・コワさん44歳、新しい生理小屋の前で / 写真提供:アモル・タワレ(ケルワディ社会福祉協会)

コワさんは、この新しい小屋を初めて利用した。この小屋は、ケルワディ社会福祉協会というNGOによって作られたものである。初潮を迎えてから彼女が行っていた小屋は土でできており、床に麻でできた布を敷いた上に寝ていたのだった。「蛇に咬まれたことがあります。でもほかにどうすればよかったのでしょう?私にはほかに行くところがないのです」とコワさんは言う。

生理中の隔離はインド南部のある地域(そして世界のほかのところでも)に深く刻まれた伝統である。女性たちは、従わなければその報いを受けることになる。NGOプロジェクトコーディネーターのアモル・タワレ氏によると、マダウィさんのコミュニティではこれまでこの慣習を破った女性はいないが、従わない場合、コミュニティの怒りを買い、時に罰金を科される。「慣習を破った女性の家族は寺院へ羊や鶏などを献上しなければなりません。あるいは米袋、数千ルピーなどもあります」

最新の生理小屋 / 写真提供:アモル・タワレ

小屋のアップグレードは、生理中の隔離に対する即効的な、かつ利益を伴わない方法だ。もしコミュニティが生理中の女性を隔離するという伝統をやめようとしないのであれば、少なくとも生理小屋が安全で快適であることが保証されるべきである、とタワレ氏の同僚、二コラ・モンテイロ氏はいう。

しかしそれは、解決策としては議論の余地がある。

これまで、政府やNGOはコミュニティに対してこの慣習を排除するよう働きかけてきたが、それに従ったコミュニティはない。小屋の改修という解決策は、そもそも生理中の隔離が妥当なのかどうかを検証することに行き着いてしまう、と考える活動家もいる。

「(小屋のアップグレードは)対処療法のようなもので、原因を解決するようなものではありません」とネパール不妊治療センターの事務局長であるペマ・ラキ氏は言う。 ラキ氏はネパールにおいて、生理中の隔離を含む、生理に関する権利について幅広く活動してきた。

SPARSHの事務局長である、ディリップ・バルサガレ氏は、女性の尊厳についても考慮しなければならない、ものを与えさえすればよいわけでなない、と訴える。「女性たちを小屋から宮殿へ移すことはできる。しかし、隔離されるという問題の核心は残されたままだ」

では女性たちが命を落としてもよいのか

モンテイロ氏は、改良された小屋が完璧な解決策ではないだろう、と同意しつつも問う。「女性が命を落としてもいいのでしょうか。女性が病気になり、不快を強いられても構わないのでしょうか?」 さらに、伝統的な小屋に一時的に滞在するだけでも、短期的および長期的な健康問題を引き起こす可能性があるという彼女の主張を裏付ける研究もある。

国連の報告によると、伝統的な生理小屋が不衛生な環境にあることから、女性は下痢、肺炎、呼吸器疾患にかかりやすくなっているという。さらに、ネパールと米国の研究者が主導したある研究では、生理小屋に籠る間に健康問題が生じた場合、その女性は生理が終わるまで医療を受けられないことが明らかとなった。この研究によると、この慣習により、女性は心理的な打撃を受け、自分がけがれている、あるいは見捨てられた、と感じるという。また、ほとんどの小屋にはドアがなく、村から離れた場所にあるため、小屋で過ごした女性の中には、蛇に咬まれたり暴行を受けた者もいる、と報告している。

マダヴィさんは、小屋に一人の時は恐怖を感じ、時々姉妹や近所の女性に一緒に過ごしてもらうよう頼むことがある。「私は時々自分に問いかけるんです。私は何をやってるのかしら。なぜ家にいられないのかしら」とマダウィさんはいう。「でも私には選択肢がありません。もしこの慣習に従わなかったら、私の家族が村から外されてしまうのです」

アップグレードした小屋は快適さと安全だけはない

モンテイロ氏は、ケルワディ社会福祉協会が、この生理のための部屋を、(女性たちと)コミュニティとをつなぐ手段として、さらに、他の活動家たちが、女性たちが生計を立てるために新しいスキルを身につけさせるような活動ができるよう後押しするために計画したという。 「女性たちは(生理小屋に)ただ滞在するために来ているのではありません」とモンテイロ氏の同僚であるタワレ氏はいう。「私たちは、生理用ナプキンの使い方を教えたり、(生計の手段として)マスクの縫い方を教えたり、生理の健康に関するビデオ(生理は自然の営みであり、隔離が必要なものではないことを説明)を見せたりしています」

最終目標はこの慣習の根絶とすべきである、という主張

しかし、バルサガレ氏は、改良した小屋は生理中の隔離という問題の本質を解決しない、という。それよりも、人々の考え方や行動を変えることに焦点を当てるべきであり、それは決して不可能な夢ではないと主張する。バルサガレ氏は、少なくともこの慣習を自分たちでやめた4つの村を知っているという。コミュニティで、教育を受け都市部へ出た若者たちが、生理は自然な現象であり、この慣習は差別的で危険なものだ、と理解したという。バルサガレ氏は家を離れ生活をする若者たちが、村に帰ってきたときに、自らこの問題に対して立ち向かう力を得たのだという。

バルサガレ氏のNGOが活動する他の村々では、女性たちは経血の量が多いときにのみ生理小屋に行くという。ランブーミ村では、ある看護学生が生理小屋に行くことをきっぱりと拒絶する、という行動を起こした。彼女の決断は彼女の母親も支持し、村の一部の人々の間で慣習に反対する動きを引き起こした。

しかし、何世代にもわたる伝統、そして人々が絶大な信頼を寄せている伝統に逆らうには勇気が必要だとマダウィさんは言う。彼女は抵抗しようと考えているものの、一人ではできないと言う。

「トライバルが多くを占める村の女性が団結し、この慣習に反対する声を上げる必要があります」、そうすれば、「もしかしたら廃止できるかもしれない」

政府は介入することを「考えている」ようだ

2015年、インドの国家人権委員会はマハラシュトラ州に対し、生理小屋の慣習を「人権の侵害」とみなし、根絶するための措置を講じるよう命じ、この問題を調査する委員会が設置された。しかし、メンバーの 1 人である バルサガレ氏によると、委員会は 2 回しか開かれていないという。

彼は、政府が宗教上の慣習や伝統に関連した問題に介入することに慎重なのだ、という。インド国憲法がトライバルの慣習の保護を保証していることから、慣習根絶への介入は政府の過干渉と見なされる可能性があるためだ。数年前、マハラシュトラ州の当局は新しい生理小屋を建て、いくつかの既存の小屋を改装し、ボウル、皿、水の容器、マット、ベビーベッド、女性が衣服を保管できる戸棚を設置した。しかし、多くのコミュニティはこのような変化を受け入れなかった。現在、ほとんどの小屋は使われず、荒廃している、とバルサガレ氏はいう。

ここ最近、バルサガレ氏は、女性たちからアメニティを備えた新しい生理小屋を建ててほしいという要望が殺到している。しかし、バルサガレ氏は要望を拒否するには複雑な思いを持ちつつも、解決策としての新しい小屋には納得できていない。「これは解決策ではないと彼女たちに伝えています。とはいえ、彼女らの要望を断るのは微妙なところがあります」という。 「誰もが電気や適切な衛生設備を望んでいるのです。ですからノーと言うのは、まるで快適さを奪っているように感じるのです」

ネパールの活動家であるラキ氏は、「要するに、新しい生理小屋の建設は悪い前例を作る可能性があるということです。我々が追求する必要があるのは、非常に長い時間がかかるとしても、社会の変化なのです」と言う。

「それを続けなければなりません。それはまるで石に水を注ぎ続けることで、いつか石が砕かれる時がくるように気の遠くなる試みなのです」



生理中の追放 Banished for bleeding: インドのトライバルの女性が快適に過ごせる生理小屋が出来た (BBCの記事から転載)女性が隔離される小屋: インド、トライバルの女性たちへよりよい「生理小屋」を (BBCの記事から転載)前のページ

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