クルマ・ガル(もう一つの生理の貧困)

「クルマ・ガル」から本来の家へ:マハラシュトラ州ガッチロリで起きている変化(Deccan Heraldの掲載記事から)

インドの先住民たちの村では、昔から続く風習で、生理中の女性や出産したばかりの母親が、村から離れた小屋に閉じ込められるという「しきたり」があります。

この風習は、とても厳しく辛いもので、女性たちの命を脅かしています。

どうしてこんな風習が続いているかというと、古来の信仰には、生理が訪れた女性は穢れているというような考えがあって、生理中の女性に接触することは、「神様の怒りを買う」とか「悪いことが起こる」って村の人たちは信じているから。この小屋の中では、蛇や動物に襲われたり、病気になったりする女性がたくさんいます。学校に通えず、生理を迎えると学校をやめていく女の子も…。命を落とす不幸も後を絶ちません。

この風習をなくそうと、たくさんの人が努力していて、少しづつ解決に向けた動きも報じられるようになってきました。ここで、紹介する記事は、生理小屋を「女性のための本来の家(現地の言葉で、『マワ・アスカン・ロン』)」に建て替えて、女性の尊厳を取り戻そうとする取り組みの一つです。

記事中に出てくるNGO: SPARSHの「バルサガレ博士」や「チェタナ・マダウィさん」は、当会のセミナーで生理小屋の問題を訴えてくれた人たち。セミナーでは、バルサガレさんたちのNGOが、ガッチロリの村で、女性たちが自分たちの手で生理小屋を建て替える試みを進めていると話されていました。その取り組みが、この記事に取り上げられている動きになっているのは、とても素晴らしいですね!

この問題を解決するために、私たちにできることは何だろう? みなさんも、ぜひ考えてみてくれると嬉しいです。

この記事のポイント

  • 「命を脅かす『隔離』の実態」
  • 「動き出した人々と、新しい家『マワ・アスカン・ロン』」
  • 「必要なのは、村全体の意識の変化」
インドの西部に位置するマハラシュトラ州。その中でも先住民族が多く暮らすガッチロリ地区が、この記事の舞台です。

「クルマ・ガル」から本来の家へ:マハラシュトラ州ガッチロリで起きている変化(Deccan Heraldの掲載記事から)

インドの英字新聞 Deccan Herald(デカン・ヘラルド)に、2025 年 12 月 15 日付で掲載された記事:”’Kurma ghar’ to rightful home: Change happening in Maharashtra’s Gadchiroli” を、日本語訳して転載します。

(元記事はこちらです)
https://www.deccanherald.com/india/maharashtra/kurma-ghar-to-rightful-home-change-happening-in-maharashtras-gadchiroli-3831257

Mrityunjay Bose

DHNS
Last Updated : 15 December 2025, 15:05 IST
Read more at:

https://www.deccanherald.com/india/maharashtra/kurma-ghar-to-rightful-home-change-happening-in-maharashtras-gadchiroli-3831257?utm_source=whatsapp&utm_medium=referral&utm_campaign=socialshare
——–

ガッチロリ:先住民族(トライバル)が多数を占めるマハラシュトラ州のガッチロリ地区では、ゆっくりとではあるが、変化が起こっている。

その土地の慣習と信仰に従って、月経中の女性は「クルマ・ガル」と呼ばれる基本的な設備もない狭苦しい小屋で暮らし、生理が終わるまで、村の人々から隔離された生活を送っている。

過去と現在:「クルマ・ガル」(月経小屋)から「マワ・アスカン・ロン」(女性としての本来の家)へ 写真提供:DH Photo/Mrityunjay Bose  (元記事より転載)

ガッチロリ地区本部近くのシタトラ村では、主にマディア族の女性たちが、古くから続く「クルマ・ガル」(月経小屋)の慣習を終わらせるため、自分たちのための「マワ・アスカン・ロン」(女性としての本来の家)を建てた。

慣習と土地の信仰に従って、月経中の女性は「クルマ・ガル」と呼ばれる狭苦しい小屋で暮らし、生理が終わるまで、基本的な生活必需品も一切なく、村の人々から隔離された生活を送っている。衛生状態や治安は劣悪で、過去には死亡事故も起きている。食料や水は遠くから運ぶしかなく、仕事や学校、大学への通学は禁じられている。

「変えることが必要です…。実際、このような慣習が今日まで続いているということは、ショッキングであり、この事実に私たちは向き合わなければいけません。私たちは住民たちに教育と情報提供を少しずつ始めており、良い反響を得ています」と、ガッチロリ地区の社会正義・特別支援局の副局長であるサチン・マダウィ博士は述べている。

自身もマディア族出身のマダウィ博士は、政府レベルでこの慣習を終わらせるためにあらゆる努力を尽くしている。一方、婦人科医である妻のプリヤンカ・シェドマケ医師は、女性たちに変化の必要性を訴えている。

実際、「農村地域の女性たちの自立と健康を支援するNGO」(SPARSH)の会長であるディリップ・バルサガレ博士は、クルマ・ガルの問題をいち早く指摘した一人であり、2013年には国家人権委員会(NHRC)に書簡を送り、NHRCもこの問題への懸念を表明した。

「私たちのボランティアは村々を訪れ、生理中の女性のために適切な施設を整えることの重要性について人々に説明しています。さらに大切なのは、適切で相応しい住居はシュラム・ダーン(訳注:インド発祥の自発的な社会奉仕活動)を通じて、造られるべきだということです」とバルサガレ博士は述べている。彼は、村にある「マワ・アスカン・ロン」は、キッチンとトイレのある部屋を備えたコンクリート造りの建物だと付け加えた。

「今のところ、反応は様々です」と彼は述べ、今後さらに多くの女性が「クルマ・ガル」の慣習を終わらせるために立ち上がることを期待していると付け加えた。

「私たちは女性たちと個別に、そして集団で話し合いをしていますが、彼女たちの反応は良好です」と、地元ボランティアのシュバンガ・ドゥガさんは語った。「これは民衆運動になるべきです」とジョティ・コブラガレさんは語った。チェタナ・マダウィさんやパピタ・クンブレさんのようなボランティアたちは、この慣習を終わらせるために尽力している。

「私たちは『クルマ・ガル』で暮らさなければなりません…私たちには選ぶことができません…女性だけでなく、村の長老たちや男性たちにも説明が必要です」と、生理中だった少女は匿名を条件に語った。「家族からのサポートはありますが、女性に必要なのは地域社会の支援です」と彼女は付け加えた。

「生殖のプロセスとして訪れる毎月の生理は、女性にとって、特に大量の出血が疲労につながるため、ケアが必要な若い少女にとって、つらい時期です。彼女たちは身体的なサポートだけでなく、精神的なサポートも必要としています」とマダウィ博士は述べた。

「バムラガド村では、女性が大量出血で死亡した事例があります。少女が野生動物にさらわれた事例もあります。ヘビに噛まれた事例もあります。クルマ・ガルに住む少女や女性への嫌がらせの問題もあります。女性たちが心身ともに安全に過ごせる場所が必要なんです。」とバルサガレ博士は述べた。

「シタトラ村は私たちにとっての実験場でした…そこでは、シュラムダーン(自発的な社会奉仕活動)によって、「マワ・アスカン・ロン」が建てられました。」と彼は述べた。

全体的な状況について、彼は次のように述べた。「ガッチロリ県には1,638の村があり、そのうち1,311の村にはマディア族が居住しています。記録によると、クルマ・ガルは1,900以上あります…実際の数はもっと多いかもしれません。県全体で47のクルマ・ガルを修復し、シタトラでパイロットプロジェクトを立ち上げました…これは、女性の健康問題などについて話し合うための施設センターとして機能する予定です。」


「失われた”宝物”と、直視すべき”現実” インドネシアで僕たちが見た光景」 ~ゴミ山と隣り合わせの日常、あどけない笑顔の子どもたちから学んだこと~前のページ

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